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修学旅行にまつわる話 1993

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中学校時代の修学旅行なんだけど、これにはひとつの思い出がある。

関東方面をいろいろまわったんだが、一番のポイントは東京ディズニーランド
だった。そのディズニーランドでの出来事。

ここについてバスを降り、先生の注意を聞いた後、クラスの生徒は解散して
自由行動になる。それぞれ好きなものどうしがいつも学校にいるときのように
グループを勝手に作り行動しだす。

さースプラッシュマウンテン乗りにいこうかー!

自分は同じ部活でもあるクラスの友人MとNの2人といつもどおり組んで
楽しそうなディズニーランド内に急ごうとした。

すると、友人Mが突然「ちょっとまって」と言った。

ん?と思ってMに聞くと、Mは「K君も一緒に誘おう」と言った。

そのK君という彼は学校にいるとき、いつも一人でいて全く言葉を発さない。
誰も普段の話し声を聞いたことがないというくらい本当に無口だ。
彼は日直のとき必要最小限の言葉で声を発するが、それ以外のときは
絶対にしゃべることはなく、同じクラスの自分も日直のとき以外彼の声を
聞いたことはなかった。

まして自分から他人に話しかけることはありえない。

そう、K君はディズニーランドに来て一緒に行動する友達がいなかったのだ。
この状況で一人だった彼の気持ちはどんなだっただろう。

確か彼はこの修学旅行の前までずっと学校にさえ来ていなかったと思う。
旅行に行くかどうか彼自身も迷っていたのではないかと思う。

僕自身はK君のことをどう思っていたかというと、無口ではあるが素直で、
コミュニケーションさえうまくとれればきっといいヤツだと思っていた。
おもしろいことがあれば彼も笑顔になる。声は出さないけど。

その笑顔は彼に対して「暗い」というイメージではなく、「おとなしい」という
イメージをもたせていたのかもしれない。

MがK君を誘おうといったとき、僕は「うん、そうやな」と言った。
普段一緒にいることのないクラスメイトと行動することにほんの少しためらった
かもしれない。

でも、Mはよく気づいたなぁと思う。えらいと思う。
いつもアホなことばっかしてるMだけど今回は感心した。

そして自分たち4人はディズニーランドの○○マウンテンとつくものを
片っ端から乗りまくった。K君は何もしゃべりはしないけれど僕たち3人に
しっかりついてきた。

「次、スペースマウンテン行こう。K君いい?」
と聞くと、ほんの少しだけほほ笑んでうなずく。

乗り終わったあと、
「ちょっとこわかったなー。気持ち悪くならんかった?大丈夫か?」
と聞いたときも、同じようにうなずく。

そういうふうにしてディズニーランドの一日は終わった。

次の日からは都内の見学としてあらかじめ決められた行動班があったので
K君とは別のグループになったけど、また、おとなしくついていったのかなあ。

そんなこんなで修学旅行も終わり、僕らは高校受験を終え、いろいろあった
中学3年間も過ぎていった。

あの修学旅行から一年後、高校生になった僕はK君を一度だけ街でみかけた。

そのとき「おはよー」と挨拶したら、彼は相変わらず言葉をださなかったが
にっこりと笑った。

  

 
 

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